2009ASMS (American society for mass spectrometry)

#レポート2009.06.25

会場:アメリカ ペンシルベニア州 フィラデルフィア
月日:2009年05月31日(日)~6月4日(水)

 私にとりまして今回で3回目の参加になりましたASMSは、アメリカ最初の首都フィラデルフィアで開催されました。フィラルディルフィアは歴史にかかわる重要な建物と、日本人にとって馴染みの深い映画ロッキーの舞台であり、新しさと古さの両方を持ち合わせた美しい場所であります。 今回の学会は新インフルエンザにより、日本の企業の方々の参加はほとんどなく、私共も参加を悩んだ学会ではありましたが、弊社にとって今後の質量分析計の動向を知ることと、弊社が輸入している各メーカーとの打ち合わせ、新製品を探るためにも、とても重要な課題があり参加をしました。

新製品で私が注目致しましたのはサーモフィッシャーサイエンティフィック社の新製品LTQ Velosです。 今まで世界でもっとも売れておりますイオントラップ(リニアイオントラップ)の最新装置になります。今までのLTQ XLと比較して2.5倍の感度差があります。この感度差を可能にした理由は、第1にTSQ Vantageで使用しておりますS-Lensの採用です。これによりイオン効率が著しく上がり感度の向上に大きく貢献しました。第2に Dual Linear トラップの採用です。High、Lowの2つのトラップで構成され、High Pressureセルでは90%を超える高いトラップ効率で得られるようになり、さらにフラグメーション効率の向上により、フラグメーションの時間を今までの3分の1に短縮することが出来ました。そして、Low PressureセルではLTQ XLの2倍のスキャン速度で33,300u/秒とすることが可能になったと同時に質量分解能も0.1uFWHM高めることにも成功しました。このことにより10Hzの超高速データ収集と低フェムトグラムレベルの測定感度を可能にしました。 LTQ XLと比較して、例えば消化物20ngを60分間の date-dependent scanで分析した場合、2倍の数のタンパク質(約450)+123%とユニークなペプチド(約1350)+152%を同定することが可能になります。複雑なプロテオミクス試料の分析において、含有量の低いタンパク質が十分に検出出来ない、翻訳後修飾の種類が多いプロテオームが動的な性質を持つことなどから、安定した測定が出来ませんでしたが、LTQ Velosはデータ収集の高速化や低濃度イオンの選択的蓄積により、これまでにない高度なプロテオミクス試料の分析が可能になったと言えるでしょう。


さて今年も分野別で毎日約700枚のポスターと、ひとつの会場で最大2000人ぐらいは収容出来るであろう7会場で、オーラルsessionが月曜日~木曜日までありました。 無機分析ではICP-MS、環境ではAgilent社の新製品GC/MS/MSでの発表などがありました。高分子、低分子、環境、食品、法医学、無機分析などあらゆる質量分析装置の最新技術、そればかりでなく、液体クロマトグラフィやNanoプローブ、検出器など質量分析装置に関わる各メーカーが展示、発表をしておりました。セッションでは、Biomarker discovery: Translation Discoveryなどタンパク質の網羅的解析(Proteomics解析)と同時に代謝物質の網羅的解析(Metabolomics解析) など、低分子から高分子までのあらゆる質量分析装置で得られた情報を元に、新薬開発などに役立てられる情報が盛りだくさん発表されていました。また、近年、広まってきているUPLCなどのHigh Pressure HPLCを接続して、High Throughput Screeningでの定性・定量分析法の確立されているユーザー様の報告なども少々ありました。 日本でも翻訳後修飾解析などに期待されている、ETD、ECD、EDDなどのアプリケーションも発表がありました。また、ポリマー分析でのイオンモビリティセパレーション分析も少数でしたが興味をもちました。 弊社でも今年から取り扱いを始めましたサーモフィッシャー製のBio Informatics 関連ソフトウェアにも関心を持ちました。既に、Worldwideで数多く販売されている、各LIMSやMS or Chromatograph支援ソフトウェアです。創薬研究から薬物動態、臨床検査、QCまでの幅広いジャンルを個々のシステムでカバーできている、Easy UseなLIMS支援ソフトをご用意しています。ここフィラデルフィアはサーモフィッシャー インフォマティックスの本部があり、サーモフィッシャーホスピタリティスィートでも、紹介されており、たくさんのユーザー様からの問い合わせや資料請求があり盛況でした。

最後に昨年末のリーマンショックなど、全世界的大不況にもかかわらず、今回のASMSに参加をして質量分析装置の更なる技術の向上と変化を感じました。この学会で得られた新しい技術や情報をいち早くお客様にお届けすることが、私の使命であります。今後もどんどん積極的に学会に参加し、お客様に情報発信していきますので是非ご期待下さい。

担当 営業 S.I

医薬、食品、環境、材料、バイオなど、様々な分野で使用される分析機器・理化学機器および各種消耗品のことなら中部科学機器へ

お電話でのお問い合わせ
メールでのお問い合わせ
Page Top