2008ASMS (American society for mass spectrometry)

#レポート2008.06.20

会場:アメリカ コロラド州 デンバー
月日:2008年06月01日(日)~06月05日(木)

 今回のASMS学会が開催されたデンバーは、標高が高い地域で昼間は30度近くまで気温が上がりますが、夜になると10度近くまで下がるという体調管理に悩まされる地域です。また、日本人メジャーリーガーの松井稼頭央選手が昨年まで活躍していたコロラド・ロッキーズの本拠地で、日本人には非常に馴染みのある場所です。

学会参加の最大目的は、新商品情報をユーザー様にご紹介することと、今後の質量分析の動向を調査することです。


まず、新商品で私が注目したのはサーモフィッシャーサイエンティフィック社製の2機種です。1機種目は、TSQ Vantageです。こちらは最高感度を求められるお客様ニーズに応えるために発表されました。今までのTSQ Ultraと比較して約5倍の感度差があります。その感度差を可能にした理由は大きく分けて3つあります。第1は、新型プローブ H-ESIⅡです。今までのプローブと比べ流速を早め、流量を多くすることにより脱溶媒効果を高めました。第2はS-Lensの採用です。S-lensとは一体型の集約レンズです。若干カーブをしたレンズが、ノイズカットをし、イオン化効率を高めることを可能にしました。第3は新型コーンIon Sweep capです。この新型コーンの採用により、汚れに強くなりました。2機種目はExactiveです。こちらは卓上型ESI- Orbitrapです。最大の特徴は、分解能が10万まで可能なことにより、化学組成をミスなく判別することが出来る点です。蛋白質・メタボロミクス測定はもとより、材料関連の測定で今までESI-TOFをご検討されていたお客様には最適な装置でしょう。また、ネガ・ポジの切り替え測定・HCD Cellを使用すればMS/MS測定も可能です。

≪装置参考フローズ≫


ポスターセッションにおきましては、毎日約700近いポスター発表があり、日本では想像もつかない規模の大きさです。バイオマーカー探索やペプチド定量の分野が非常に多く発表されておりました。また、私が一番興味深かったのは、独立行政法人 製品評価技術基盤機構様の大腸菌の発表です。まず、大腸菌はそれぞれの特徴において「株(strain)」と呼ばれる群に分類することが出来ます。幼児や病気などで衰弱している者、あるいはある種の薬物を服用している方は、 特殊な株で病気を引き起こすことがあります。この株が人体の血液中や尿路系に侵入すると、大腸菌になることがあります。この大腸菌に、自然のままの大腸菌(野生株)と、人工的に代謝に関わらない大腸菌を削った大腸菌で、時間経過による代謝物に関わると考えられる大腸菌の増殖を質量分析装置で比較検討する内容でした。結果、研究者の予測通り人工的な大腸菌は、増殖率が高い結果を得ることが出来ました。このように大腸菌をコントロールすることが出来る研究が進めば、創薬開発に一役買う結果を得ることが出来ます。質量分析は産業界においては欠かせない存在でしょう。

私にとってASMS学会は2回目の参加でしたが、前回と比較し参加人数が増加しておりました。これは欧米のみならず、日本をはじめ中国、そしてインドにおいても更なる研究が行われ、バイオマーカーの定性・定量による成人病やストレス診断など、人と質量分析との関わりがますます増えているからだと考えます。
私も最新のテクノロジーを搭載した質量分析装置に携わり、お客様に引き続きご提案し、社会貢献が出来る代理店となって参りたいと思います。

担当 営業 S.I

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