2025 ASMS(American Society for Mass Spectrometry)
月日:2025年6月1日(日)~6月5日(木)
会場:アメリカ ボルチモア
世界最大級の質量分析学会であるASMSが6月1日から5日までの5日間、アメリカのボルチモアで開催されました。今回初めてASMSに参加させていただき、世界の最先端の学会を楽しんできました。
今回は、羽田空港からニューヨークを経由し約17時間かけてボルチモアに入りました。約13時間のロングフライトでしたが、ほどよく眠ることができ、時差ぼけも辛くない程度ですみました。(時差は東京時間-13時間です。。。)
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開催都市のボルチモアは、アメリカの東海岸にあり、ニューヨークから約300キロ南西に位置する街です。アメリカの国歌である「星条旗」が生まれた地としても有名で、MLBやNFLチームの本拠地も構えていてプロスポーツも盛んな街です。
ニューヨークに到着後、ボルチモアまでは車で移動しましたが、横を走っている車はなんとアメ車やドイツ車ではなく、日本車ばかりだったことが非常に印象的でした。また、突然現れる巨大な貨物車やゴミ収集車を見て、アメリカを感じることもできました。

ASMS開催初日の朝は、「1週間頑張るぞ」と強く奮い立たせてくれるほど(10℃程度)に冷え込み、心も体も引き締まりました。
早速、Thermo Fishier Scientific社の製品発表会に参加し、そこで新たな3製品の発表がありました。中でも「AstralZoom」と「Excedion」にはAIを用いた特定の質量範囲に分解能を集中させる「Zoom」機能が搭載され、高分解かつ高速スキャンの一助となることが期待されています。ついにこの分野にもAIが搭載されるのかという驚きがありました。
他のメーカーでも新製品が発表され、SCIEX社とWaters社からはそれぞれ1機種が発表されました。Bruker社からは4機種の新製品が同時に発表され、その機種の多さから熱量を強く感じました。timsOmniはtimsTOFベースの質量分析にOmnitrapモジュールを統合したことで、複雑なタンパク質構造の解読が容易になるとの発表がありました。低分子向けのtimsMetaboも発表され、幅広いユーザーのニーズに応えようとしている印象を受けました。
SCIEX社からは、ZenoTOF7600+の上位機種となるZenoTOF8600の発表がありました。特に7600+でも搭載されているZeno Trapが改良され、8600では感度が10倍向上されています。Waters社からは、Xevo Absolute TQ XRがリリースされました。従来機よりも陰イオン性化合物の検出感度が最大で15倍向上し、より低い定量下限を求めることができます。
各社上位機種の新製品をリリースしており、世界的にはハイスループットのニーズが高まっているように感じたと同時に、定価ベースで数億円の高額な装置であるため日本のマーケットでどれだけの需要があるのかという疑問も生まれました。

ASMS期間中は、毎朝7時から各企業が主催するBreakfast meetingと毎晩20時から開催されている夜のHospitalitysuitesにも参加しました。
Breakfast meetingは毎日様々なテーマの発表があり、どのメーカーのセッションに参加するかを選ぶ時間さえもワクワクしていました。朝早い7時からの開催にもかかわらず、会場には多くの参加者が集まっていました。主な参加者は若い学生の方や、企業の方、ベテラン研究者など幅広く、活発的な雰囲気が印象的でした。Hospitality suitesでは、会場に新製品を含む各社の主力装置が展示され、装置の説明を受けたり歓談する場となっており、連日連夜各社のブースは賑わっておりました。
その中でも島津製作所のブースは毎晩開場前から行列ができており、様子を伺ってみるとブース内からは香ばしい素敵な香りが漂ってきていました。香りにつられて歩き着いた先には、メインであるローストビーフやそのほかにも様々な食事が用意されていて、終始賑わいを見せていました。
会期中、コンベンションセンター内では、装置メーカーのほか、カラムやバイアルなどの消耗品関連の企業、解析ソフト・イオン源専門の企業など非常に多くの企業や大学、研究機関などが出展し、発表を行なっておりました。その中でも弊社はビーズを取り扱う企業と話しをする機会があり、今後の医療や研究に関連する非常に興味深い内容でしたので、簡単にご紹介します。
このビーズは、非常に小さな磁石がついた「つぶ」になります。この「つぶ」の表面には目的のタンパク質と特異的に結合する分子をコーティングしており、サンプル中に存在するタンパク質を見つけて捕まえる役割を担っています。磁気を用いた捕集ユニットによってビーズとタンパク質を回収し、質量分析装置によって体内で何が起こっているのかを詳しく調べることができます。ビーズを使った前処理は、バイオ分析や診断、創薬の分野で活躍が期待されています。
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今回初めてASMSに参加させていただきましたが、日本最大の分析機器・科学機器展である「JASIS」と比較すると規模の巨大さに日々圧倒され、アメリカの研究に対する熱意や力の入れ方に驚きと感動を覚えました。ASMSとはどういった会なのか、初参加者によくある緊張感を持ちながら臨みましたが、初日から各メーカーで約10種類もの質量分析装置の新製品が発表され、その他にも色々と情報収集に奔走しているうちにあっという間に帰国していた感じです。それくらい学ぶことの多い学会でした。今後は、今回のASMSで得た情報をお客様のニーズに添った形で紹介していきたいと思います。
担当:東京支社 Y.S.