日本薬物動態学会 第30回ワークショップ

#レポート2016.05.27

月日:2016年5月12日(木)~13日(金)
会場:千里ライフサイエンスセンター

 例年GW連休も明けて、初夏の陽光が差し始める頃に薬物動態ワークショップは開催されます。私は4回目の参加となりますが、数ある学術大会の中で本ワークショップに愛着を持っております。薬物動態学会の学術大会としては秋の年会よりも参加人数は少なくなりますが、研究者の方々の密度の高いディスカッションを拝聴できるように感じるのは勘違いでありましょうか。そんなワークショップでありますが、今年は千里(大阪)で開催されることになりました。これまで神保町での開催が続いており、古本屋の並ぶ路地を歩いて会場に向かうのが恒例だった私にとっては、大阪開催ということだけでも目新しいものがありました。懇親会でお聞きしたことですが、大阪開催は30回続いているワークショップの歴史の中で2回目とのことです。

今回のワークショップのテーマは「外へ向かう薬物動態 ~臨床, 疾患, 新しい萌芽技術~」でした。各論詳細についてのご紹介は差し控えますが、大枠として次のような講演がございました。

・安全な臨床実験に臨む為の非臨床実験のあり方, 治験薬投与量の安全域の設定
・FDAとEMAでの非臨床動態データに対する要求項の違い
・13C標識を用いた代謝フラックス解析
・灌流培養が可能な培養チップの開発および
Human-On-A-Chip / Organs-On-A-Chipについての考察
・PMDAにおける近年の新医薬品承認の状況
・抗精神薬の個人応答性の差異と臨床現場における投薬量選択の難しさ
・BBBにおける新規の有機カチオン輸送系トランスポーターについて考察
(抜粋)

興味深く拝聴した演題ばかりでございましたが、中でも未だ脳内薬物濃度を非侵襲的に直接定量する手法がなく、またそれを推し量るバイオマーカーも見つかっていないことは意外でした。広く処方されているSSRIについても有効血中濃度がないことをお聞きし、改めて中枢神経作用薬の複雑さを実感いたしました。
薬物の脳内移行性に関連して、私は毎年春先に花粉症に悩まされ抗ヒスタミン薬は手放せないものとなっておりますが、同時に服薬時の如何ともしがたい集中力欠如にも悩んでおります。学会にて「鈍脳」という言葉をお聞きし、抗ヒスタミン薬を服薬した際にウイスキー90 mLを飲んだときと同等程度の認知機能の低下が発生し得ることを知りました。第一世代の抗ヒスタミン薬は脳内移行性が高く、抗コリン作用も持つことから脳の活動に支障をきたしやすいようです。第二世代ではそのような傾向が抑えられていますが個人差もあることから、花粉症薬の選択の重要性が伺えます。また、そのような副作用に対しての分子バイオマーカーもないことから、副作用の評価に認知テストといった手法に頼らざるを得ない現状を伺いました。

毎年講演テーマは変わっていきますが、研究者の方々が熱心な議論を交わされる様子は変わることはなく、勉強をさせて頂くと共に本学会参加の大きな楽しみとなっております。お客様に有益な情報を1つでも多くお届けできるよう、研鑽を積んでまいりたいと改めて実感した学会参加となりました。

担当:名古屋営業所 K.O.

医薬、食品、環境、材料、バイオなど、様々な分野で使用される分析機器・理化学機器および各種消耗品のことなら中部科学機器へ

お電話でのお問い合わせ
メールでのお問い合わせ
Page Top